RODE NT-USB+レビュー|生活音は本当に拾うか
RODE NT-USB+はコンデンサーだから生活音を拾う——この通説をTom's Hardwareの実機評価・Podcastageの実測・RØDE公式仕様で突き合わせ、自己ノイズと環境音を分けて検証する。
自宅からの会議で「声が遠い」と言われるなら、次に検討すべきはRODE NT-USB+である
RODE NT-USB+は、自宅から商談やウェビナーに出るビジネスパーソンが「PC内蔵マイクからの卒業」を考えたとき、必ず候補に上がるUSBコンデンサーマイクだ。実売¥28,018。オーストラリアのRØDEが2022年に投入した、2014年発売の初代NT-USBの正統な後継機である。
そして必ず、同じ壁に当たる。**「コンデンサーマイクは感度が高いから、自宅の生活音まで拾ってしまう」**という警告だ。国内の個人ブログもRedditのスレッドも、この点を繰り返し指摘している。一方でTom's Hardwareは同じマイクを「自己ノイズはごくわずか」と評価し、Editor's Choiceを与えている。
評価が正反対に見えるのは、両者が違うものを「ノイズ」と呼んでいるからだ。本記事は、RØDE公式仕様・Tom's Hardware・Podcastageの実機テスト・価格.com掲載スペック・国内の長期使用ブログを突き合わせ、この混同を3つに分解する。そのうえで、賃貸の自宅から会議に出る働き方でNT-USB+が成立するのか、会社支給PCで使えるのかまで判断できる材料を並べる。
RODE NT-USB+の中身|24bit/48kHz・最大入力118dBと、側面2ノブが担う役割
NT-USB+は、スタジオグレードのコンデンサーカプセルを単一指向性(カーディオイド)で使うサイドアドレス型のUSBマイクである。RØDE公式が公開している主要仕様は次のとおりだ。
| 項目 | 公表値 | 出典 |
|---|---|---|
| 変換方式 | コンデンサー(圧力傾度型) | RØDE公式仕様 |
| 指向性 | カーディオイド(単一指向性) | RØDE公式仕様 |
| 周波数特性 | 20Hz〜20kHz | RØDE公式仕様 |
| ダイナミックレンジ | 97dB(@10% THD) | RØDE公式仕様 |
| 最大入力SPL | 118.0dB(@10% THD・IEC 60268) | RØDE公式仕様/価格.com |
| ビット深度・サンプルレート | 24bit / 48kHz | RØDE公式仕様 |
| 電源 | USBバスパワー 5V・500mA | RØDE公式仕様 |
| 寸法・重量 | 184 × 62 × 50mm/540g | Tom's Hardware/価格.com |
側面の2つのノブは「ゲイン」ではない
ここは購入前に押さえておくべき点だ。RØDEの日本語ユーザーガイドは、上のコントロールを「ヘッドフォンに送られるダイレクトマイク信号の量を調整する」モニターミックス、下をヘッドホン出力音量と明記している。Tom's Hardwareも本体側のゲイン調整は存在しないと書いており、レビューの短所欄に「本体ゲイン操作がない」を挙げている。
つまり入力ゲインはOS側の入力レベル、またはRØDEのアプリで動かす。手元のノブを回して環境音を絞る、という運用はできない。この事実は後述する生活音の議論に直結する。
同梱物だけで運用が始まる
本体・着脱式ポップフィルター・卓上三脚・リングマウント・3mのUSB-Cケーブル(SC29)・ケーブルマネジメントプラグが標準で入る。ポップフィルターが別売りのUSBマイクが多いなかで、破裂音対策まで箱の中で完結する構成は導入初日の手間を確実に減らす。付属ケーブルが3mである点も実務的で、初代NT-USBの6mケーブルを「デスクには長すぎる」と書いた国内ブログの不満は世代交代で解消されている。
「コンデンサーは生活音を拾う」を3つのノイズに分解する|自己ノイズ・環境音・接地ハム
USBマイクのレビューで「ノイズ」と呼ばれているものは、少なくとも3種類ある。媒体ごとに評価が食い違って見えるのは、それぞれが別の量を語っているためだ。NT-USB+に関する各媒体の記述を整理すると、次のようになる。
| 混同されている3つの「ノイズ」 | 実体 | NT-USB+での評価 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 自己ノイズ(ノイズフロア) | マイク回路自体が発生させるサーという残留音 | 「ごくわずか」。Revolution Preampにより低ノイズ・高ゲイン化 | Tom's Hardware/RØDE公式 |
| 環境音の収音 | 部屋の中に実在する音を拾ってしまう量 | 感度が高く、隣室の話し声まで入る場面がある(初代での報告) | マサオカブログ/Reddit r/Twitch |
| 接地由来のハム | 設置環境の電位差で生じるブーンという低周波 | デスクトップPC接続時に本体へ触れると発生した条件あり。ラップトップでは再現せず | Podcastage実機テスト |
この3つは対処法がまったく違う。 自己ノイズはマイクの設計で決まるため、買い替え以外に手はない——そしてNT-USB+はここで高評価を得ている。接地ハムは接続先を変える、あるいはマイク本体に触れない設置にすることで避けられる。問題は真ん中の環境音だけだ。
ゲインを絞っても環境音は消えない
「入力を下げれば周囲の音は入らない」という対処は直感的だが、成立しない。ゲインは声にも環境音にも同じだけ効くため、両者の比は変わらないからだ。
Podcastageの実測がこれを裏づけている。同レビューは、ゲインを0%まで絞った状態でも、口元から約15cm(6インチ)の距離で-8〜-9dBの信号が出続けたと報告している。0%はミュートではない、という指摘だ。声がそこまで残るということは、同じ空間のエアコンや家族の声もそれなりに残る。
効くのは「距離」であり、その余裕は世代間で8dB増えている
環境音に対して確実に効くのは、声と環境音の比そのものを変える手だ。もっとも単純なのが距離である。
音圧は逆二乗則に従い、音源との距離が半分になると音圧レベルは約6dB上がる。口元30cmで話していた人が15cmまで近づけば、声だけが約6dB持ち上がる。一方でエアコンの稼働音や隣室の生活音は部屋全体に回り込んだ拡散音に近く、マイクを数十cm動かしてもほとんど変わらない。結果として声と環境音の比が約6dB改善する。国内ブログが対処法として繰り返し挙げる「マイクを口元に近づけて入力を下げる」は、この物理を経験的に言い換えたものだ。
ここで最大入力SPLが効いてくる。近づけば近づくほどマイクに入る音圧は上がり、いずれ歪む。価格.comが掲載する両世代のスペックを並べると、初代NT-USBの最大SPLは110dB、NT-USB+は118dBである。8dBの差は音圧比にしておよそ2.5倍。Tom's Hardwareは初代について「ゲインが高めで、大きな音源では歪みやすい」と指摘し、NT-USB+では改善したと評価している。
言い換えれば、NT-USB+は「近づける」という定番の対処法を、初代より8dBぶん深く実行できるマイクである。声が大きい人、感情を込めて話す商談が多い人ほど、この余裕が効く。
それでも残る分は、内蔵DSPで削る
距離で稼いだうえで残る環境音には、内蔵処理が用意されている。RØDE公式ユーザーガイドによれば、NT-USB+の内蔵DSPで有効化できるのはノイズゲート、コンプレッサー、ハイパスフィルター(75Hzまたは150Hzの2択)、そしてAPHEX Aural ExciterとBig Bottomである。
このうち会議で効くのは前の3つだ。ノイズゲートは一定音量以下の入力を遮断するため、黙っている間の空調音が相手に届かなくなる。ハイパスフィルターは低域を切り、エアコンの唸りや床から伝わる振動を減らす。Podcastageが「このマイクはローミッドが強く出るため、ハイパスフィルターが役に立つ」と述べているのは、この機能が飾りではないことを示している。
Amazon でチェック
RODE Microphones ロードマイクロフォンズ NT-USB Plus USB Microphone NTUSB+
¥28,018
詳細を見る会社支給PCにソフトを入れられなくても内蔵DSPは効く|スマホで設定を焼き込む運用
在宅と出社を行き来する働き方では、私物PCと会社支給PCの両方でマイクを使うことになる。そして会社支給PCは、多くの場合ソフトウェアの追加インストールが管理部門によって禁止されている。この制約でUSBマイクの機能が半減する製品は珍しくない。
NT-USB+はこの制約を回避できる。RØDE公式の日本語ユーザーガイドは、次の2点を明記している。
- RØDE Central経由で処理設定を有効にすると、その設定はNT-USB+側に維持される。アプリを閉じても効果は有効なまま、DAWや他の録音アプリでマイクを使える
- iOS/Android向けのRØDE Reporterでは、入力ゲイン・ハイパスフィルター・コンプレッサー・ノイズゲート・APHEX処理を調整でき、「Save to Microphone」をタップするとプラグを抜いた後もマイク本体に設定が保存される
つまり運用はこうなる。自宅の私物PC、あるいは手持ちのスマートフォンでノイズゲートとハイパスフィルターを追い込み、本体に書き込む。翌日、会社支給PCにUSB-Cで挿すだけで、ソフトを一切入れずに同じ処理が効いた声が出る。マイクがクラスコンプライアントなUSBオーディオデバイスとして認識されるため、専用ドライバーも要らない。
この「本体保存」は、後述するShure MV7+が高く評価されている理由そのものである。NT-USB+も同じ土俵に立っていることは、国内の情報源ではほとんど触れられていない。
RODE NT-USB+で不満が出る4つの場面|ミュート非搭載・ゲインノブなし・ローミッド・三脚
購入前に受け入れておくべき弱点を、媒体横断で確認できたものだけ挙げる。
1. 物理ミュートボタンがない
Tom's Hardwareは短所として本体側のゲイン操作の不在を挙げ、Podcastageは「物理ミュートボタンが欲しかった」と明言している。初代NT-USBについても、国内ブログが同じ不満を書いている。世代を越えて残っている設計上の割り切りだ。
会議中の咳払いや家族の声を瞬時に止めたい場面では、会議アプリ側のミュートに頼ることになる。Teams・Zoom・Google Meetはいずれもショートカットキーでミュートを切り替えられるため運用は成立するが、手元の物理スイッチで確実に切りたい人には合わない。
2. 本体でゲインを絞れない
前述のとおり側面2ノブはモニターミックスとヘッドホン音量である。入力レベルの調整はOSのサウンド設定かRØDEアプリを開く必要があり、会議中に思い立って手元で下げることはできない。事前に適正値を決めて固定する使い方が前提になる。
3. ローミッドが強く出る
Podcastageは、このマイクのローミッドが強めであり、低音寄りの声を近接で使うと過剰になりうると指摘している。ハイパスフィルターがその対策として機能するとも述べており、低い声の人ほど内蔵HPFの設定を前提に運用すべきという結論になる。声の帯域が高めの人にはむしろ厚みとして働く領域で、評価が分かれるのは声質の差による。
4. 付属三脚は軽く、接地ハムの報告もある
Tom's Hardwareは付属三脚をプラスチック製で軽量と評し、バランスを崩すと倒れる可能性、そして卓上の振動を抑える効果は限定的だと書いている。キーボードの打鍵が机を伝ってマイクに乗る環境では、リングマウントを使ってマイクアームへ移すのが確実だ。
またPodcastageは、デスクトップPCに接続した状態でマイク本体の特定箇所に触れると電子的なハムが聞こえたが、ラップトップでは再現しなかったと報告している。設置環境に依存する現象であり、発生した場合は接続先や電源環境を変えることが対処になる。
それでも選ぶ理由は、これらがいずれも「運用でよける」ことができる欠点だからだ。ミュートはアプリ側で足り、ゲインは事前固定で足り、ローミッドはHPFで削れ、振動はアーム化で切れる。逆に、音質そのものと自己ノイズの低さは後から手を入れられない領域であり、そこにこそ¥28,018が効いている。
Shure MV7+との違い|コンデンサーとダイナミックのどちらに差額¥9,582を払うか
同じ「会議の声を良くする」目的で最も比較されるのが、ダイナミック型のShure MV7+である。実売は¥37,600で、NT-USB+との差額は¥9,582。方式が違うため、優劣ではなく適性で選ぶ。
| 比較軸 | RODE NT-USB+ | Shure MV7+ |
|---|---|---|
| 変換方式 | コンデンサー(カーディオイド) | ダイナミック(単一指向性) |
| 実売価格 | ¥28,018 | ¥37,600 |
| 環境音の入りにくさ | 感度が高く、静かな部屋が前提 | 構造的に正面以外を拾いにくい |
| 声のディテール | 細部まで拾い、抜けが良い | 太く落ち着くが、細部は控えめ |
| 接続 | USB-Cのみ | USB-C/XLR両対応 |
| 本体への設定保存 | 対応(RØDE Central/Reporter) | 対応(MOTIV Mix) |
| 物理ミュート | 非搭載 | 搭載 |
| 付属品 | 三脚・ポップフィルター・USB-Cケーブル | USB-Cケーブル(アーム別売) |
分岐は部屋の静けさで決まる。**扉を閉められる個室があり、家族の生活音から物理的に隔離できるならNT-USB+**が有利だ。同じ予算で三脚とポップフィルターまで揃い、声の抜けはコンデンサーのほうが明確に良い。差額の¥9,582を、モニターライトやマイクアームなどデスク環境の別の欠落に回せる。
一方、リビングの一角で会議に出る、隣室の音が入る賃貸に住んでいる、家族が在宅している時間帯に商談があるなら、MV7+を選ぶべきだ。ダイナミック型が構造として周囲を拾いにくいという性質は、後からソフトウェアで作り出せるものではない。物理ミュートボタンも、生活音が読めない環境では保険として効く。
将来XLR接続のオーディオインターフェースへ発展させる可能性があるなら、その一点でもMV7+に分がある。NT-USB+はUSB-C専用機であり、拡張の方向はソフトウェア側にしかない。
同じ「NT-USB」で流通する3世代の見分け方|初代・Mini・NT-USB+
日本語で「RODE NT-USB レビュー」と検索すると、上位に並ぶのは2014年発売の初代と2020年発売のMiniのレビューであり、NT-USB+単体を扱った国内記事はほとんど見つからない。購入判断の材料として読んでいる記事が別世代のものだった、という事故が起きやすい。3世代の識別点は次の表で足りる。
| 識別軸 | 初代 NT-USB | NT-USB Mini | NT-USB+ |
|---|---|---|---|
| 発売 | 2014年 | 2020年 | 2022年 |
| 接続端子 | USB-B | USB-C | USB-C |
| ビット深度 | 16bit | 24bit | 24bit |
| 最大入力SPL | 110dB | — | 118dB |
| 内蔵DSP | なし | なし | あり(ゲート/コンプ/HPF/APHEX) |
| ポップフィルター | 着脱式(外付け) | 内蔵 | 着脱式+内部メッシュ |
| 実売価格 | 国内流通終了 | ¥15,755 | ¥28,018 |
RØDE公式ヘルプセンターは、初代とNT-USB+の差を「USB-C化」「Revolution Preampによる低ノイズ・高ゲイン化」「内蔵DSPとRØDE Connect対応」の3点と説明している。逆に初代の利点として、Linuxを含む幅広いシステムでの汎用USB互換性を挙げている点も公式の見解だ。
見分け方として実用的なのはグリルの内側の色である。Tom's Hardwareは、内部のポップフィルターが青いメッシュになっていることが、初代とNT-USB+の外観上もっとも分かりやすい違いだと記している。商品画像で内側が青く見えればNT-USB+だ。
予算を¥15,755に抑えるなら|同ブランドのNT-USB Miniという選択
「まずPC内蔵マイクから抜け出したいが、¥28,018はまだ踏み切れない」という段階なら、同じRØDEのNT-USB Miniが現実的な着地点になる。実売¥15,755、差額は¥12,263だ。カーディオイドのコンデンサーカプセル、内蔵ポップフィルター、3.5mmヘッドホン出力によるダイレクトモニタリングという骨格は共通しており、幅89mm・高さ141mmと省スペースである。
ただし削られている部分は明確だ。本体にはヘッドホン音量のダイヤルしかなく、ミュートも入力調整も本体では行えない。内蔵DSPによるノイズゲートやハイパスフィルターも持たない。約2年使用した国内ブログは、環境音対策として「マイクを口元に近づける」「入力を下げる」という運用でしのいだと書いており、これは本記事で見たとおり距離でしか解けない構造をそのまま示している。
したがって選び分けはこうなる。静かな個室があり、設定を追い込む手間をかけたくないならMini。生活音が完全には消せず、ノイズゲートとハイパスフィルターを本体に焼き込んで運用したいならNT-USB+。¥12,263の差額の実体は、音質差というより「環境の悪さをマイク側で吸収できるかどうか」である。
Amazon でチェック
【国内正規品】RODE NT-USB Mini USBマイク NTUSBMINI
¥15,755
詳細を見るRODE NT-USB+が投資として回収できる働き方、回収できない働き方
回収できるのは次の条件が揃う働き方だ。
- 扉を閉められる自室・書斎から会議に出る30〜40代のマネージャー、コンサル、営業職。声が説得力に直結し、週に1回以上は「聞き返されると痛い」商談や面接がある
- ウェビナー登壇やナレーション収録を年に数回でも行う在宅プロ。ゼロレイテンシのヘッドホンモニタリングで自分の声を遅延なく確認しながら話せるため、話す速度と間を制御しやすい
- 私物PCと会社支給PCを日常的に行き来し、後者にソフトを入れられないビジネスパーソン。設定を本体に焼き込む運用で、環境が変わっても声が変わらない
- すでにマイクアームか安定した卓上環境を持っている人。付属三脚の弱さという弱点が最初から無効化される
反対に、回収しにくいのは次の場合だ。リビングやダイニングの一角から会議に出ていて、家族の生活音を物理的に切れない環境。手元の物理スイッチで瞬時にミュートしたい運用。そして会議の頻度が週に1〜2回程度で、相手から音質を指摘されたことがない場合。最後のケースでは、同じ予算を照明やウェブカメラに回したほうが会議での印象改善は大きい。
よくある質問
Q. コンデンサーマイクだと自宅の生活音を拾うと聞きました。RODE NT-USB+でも同じですか。 同じ性質を持つ。ただし「ノイズ」と呼ばれているものは3種類あり、混同すると判断を誤る。Tom's Hardwareが「ごくわずか」と評価したのはマイク回路自体が出す自己ノイズであり、国内ブログやRedditが問題にしているのは部屋に実在する音の収音、Podcastageが報告したのは接地由来のハムだ。3者は矛盾していない。自己ノイズは設計で決まり買い替えるしかないが、環境音は距離と内蔵ノイズゲート・ハイパスフィルターで削れる。扉を閉められる個室が確保できるかどうかが実質的な判断軸になる。
Q. 本体のノブでゲインを絞れば、環境音は減りますか。 減らない。理由は2つある。まず側面の2つのノブは、RØDE公式の日本語ユーザーガイドが明記するとおりモニターミックスとヘッドホン音量であり、マイク入力ゲインのノブは搭載されていない。Tom's Hardwareもレビューの短所欄に本体ゲイン操作の不在を挙げている。次に、仮にOS側でゲインを絞っても声と環境音の比は変わらない。Podcastageの実測では、ゲインを0%にしても口元約15cmで-8〜-9dBの信号が残った。効くのは距離を詰めて声だけを持ち上げることと、内蔵のノイズゲート・ハイパスフィルターで削ることである。
Q. 会社支給のPCに専用ソフトを入れられません。内蔵DSPは使えますか。 使える。RØDE公式の日本語ユーザーガイドは、RØDE Central経由で有効にした処理設定がNT-USB+側に維持され、アプリを閉じても効果が残ると説明している。さらにiOS/Android向けのRØDE Reporterでは「Save to Microphone」により、プラグを抜いた後も入力ゲイン・ハイパスフィルター・コンプレッサー・ノイズゲート・APHEX処理の設定が本体に保存される。私物PCかスマートフォンで一度追い込んでおけば、会社支給PCにはUSB-Cで挿すだけでよい。クラスコンプライアントなUSBオーディオデバイスとして認識されるため専用ドライバーも不要である。
Q. 物理ミュートボタンがないのは、会議で致命的ですか。 運用でよけられる範囲にとどまる。Podcastageは物理ミュートボタンの不在を明確な短所として挙げており、初代NT-USBについても国内ブログが同じ不満を書いている。世代を越えて残っている割り切りだ。ただしTeams・Zoom・Google Meetはいずれもキーボードショートカットでミュートを切り替えられるため、実務上は会議アプリ側で足りる。手元の物理スイッチで確実に切りたい、あるいは家族が不意に入室する環境なら、物理ミュートを備えるShure MV7+のほうが安心して使える。
Q. 「NT-USB」で検索して出てくるレビューは、NT-USB+と同じ製品の話ですか。 多くは違う。日本語で「RODE NT-USB レビュー」を引くと、2014年発売の初代と2020年発売のMiniの記事が上位を占め、NT-USB+単体を扱った国内記事はほとんど見つからない。世代差は小さくない。初代は16bit・USB-B・最大SPL 110dBで内蔵DSPを持たず、NT-USB+は24bit・USB-C・最大SPL 118dBで内蔵DSPを備える。RØDE公式ヘルプセンターも両者の差をUSB-C化、Revolution Preamp、内蔵DSPの3点と説明している。見分けるには商品画像でグリル内側の色を見ればよい。Tom's Hardwareが記すとおり、内部ポップフィルターが青いメッシュならNT-USB+である。
RODE NT-USB+を選ぶ最終判断|部屋を静かにできるかが唯一の分岐点
RODE NT-USB+の評価は、突き詰めると一行に収まる。マイクとしての完成度は¥28,018のクラスで疑う余地がなく、失敗するとすればそれは部屋の側の問題である。
「コンデンサーだから生活音を拾う」という警告は正しいが、警告が指しているのは自己ノイズではない。Tom's Hardwareが自己ノイズを「ごくわずか」と評価してEditor's Choiceを与え、同時に国内ブログが「隣の部屋の声まで拾う」と書き、Podcastageが接地由来のハムを報告する——この3つは別々の現象であり、どれも事実だ。混同したまま読むから判断が止まる。
そして環境音に効く手は、ゲインではなく距離である。逆二乗則により口元までの距離を半分にすれば声だけが約6dB持ち上がり、環境音との比が改善する。NT-USB+はその「近づける」を、最大入力SPL 118dBという初代比8dBの余裕をもって実行できる。残った分はRØDE Reporterでノイズゲートとハイパスフィルターを本体に焼き込めば、会社支給PCでもソフトなしに同じ処理が効く。
扉を閉められる部屋がある人にとって、これは投資として素直に回収できる一台だ。閉められる部屋がないのであれば、同じ悩みはダイナミック型を選ぶことで構造的に解決する。判断すべきは製品の優劣ではなく、自分の部屋がどちらの前提に当てはまるかである。
Your Next Investment
扉を閉められる個室から会議に出るなら、三脚とポップフィルターまで込みで声を一段引き上げる一台。
RODE Microphones ロードマイクロフォンズ NT-USB Plus USB Microphone NTUSB+
¥28,018
関連記事
- 【Shure MV7+】会議の声を変えるマイク検証 — 生活音を構造的に拾わないダイナミック型という別解
- ビジネス向けUSBマイクおすすめランキング — NT-USB+を含む3機種を会議の実務条件で採点した比較

Nei
現役マーケター・事業開発・ガジェットキュレーター
30代、マーケター兼事業開発として働いています。AIを活用した業務改善に関わる中で、道具の質が仕事の質を左右すると痛感する毎日です。
ガジェットや家電への関心は、純粋に「時間を買うための投資」という感覚からきています。2027年完成予定のマイホームに向けて理想の暮らしを設計する中で、国内外のレビューを読み漁るのが日課になりました。
マーケターの習性で、スペックや口コミは感情ではなくデータとして読みます。実際に購入・レンタルして使い込んだ製品については、良い点だけでなく「自分には合わなかった部分」もそのまま書く方針です。
LUXE GEARのレビューポリシー
LUXE GEARの記事は、大きく3つのスタンスで書いています。読む前に知っておいてほしいことを、正直に書いておきます。
購入またはレンタルして、日常の中で長期間使い込んだ製品のレビューです。生活に組み込んでみて初めてわかった本音の使用感を書いています。
手元にない製品でも、スペックや国内外の口コミを徹底的に調査してまとめます。「誰に向いているか」「どんな人には合わないか」を整理した、購入の判断材料になる記事です。
複数の製品を価格・使い勝手・デザインなど具体的な基準で比較します。「結局どれがいいか」だけでなく、「自分の使い方ならどれか」がわかる記事を目指しています。
読者の皆様へのお約束
どの記事でも「完璧な製品はない」という前提で書いています。向いていない人や合わない使い方があれば、必ず正直に書きます。